たとえば、ニンニクや数日経った汗の臭いをかくと、不快に感じますよね。

嗅覚過敏だと、その何倍も「くさい!」と感じ、頭痛や吐き気をともないます。

さらに嗅覚過敏がひどくなると、食事もとれず、人とも会えず、まともに生活できません。

そんな嗅覚過敏は、どうして起こるのでしょうか。

その原因や治療法をくわしく解説します。

嗅覚過敏とは?

嗅覚過敏とは、多くの人がクサイと感じる悪臭のみでなく、壁のニオイ、土のニオイ、おそらく臭くないであろう人の息にも敏感に反応してしまい、頭痛やめまい、吐き気など身体的な苦痛をともなうことをいいます。

嗅覚が過敏になる対象は人それぞれです。

すべてのニオイに過剰に反応してしまう人もいれば、ある特定のニオイだけがダメだという人もいます。

食べものの好みのように、好きなニオイ・嫌いなニオイもひとりひとりちがいます。

嗅覚過敏の原因は?

では、嗅覚過敏はどのようにして起こるのでしょうか。

大きな可能性としては、3つあります。

①鼻の疾患によるもの

副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、ウィルスによる炎症など、鼻がつまったり、ニオイを感じるところに異常が発生すると、嗅覚障害が起こります。

②外傷によるもの

顔面・頭部の外傷によっても嗅覚障害が生じることがあります。

脳出血、脳挫傷、意識を失うほどの外傷を負ったときのほか、頭部の打撲といった軽いものでも起こる可能性があります。

鼻がニオイを正しく感じとっていたとしても、脳にニオイの情報を送られるまでの経路に問題があれば、悪臭を強く感じたり、ニオイを正しく嗅ぐことができなくなります。

③心因性によるもの

ストレスを強く感じすぎると、嗅覚に異常があらわれることがあります。

また、精神疾患、発達障害のかたは、嗅覚過敏を患うことが多いです。

どうして精神的なものから嗅覚障害が起こるのか、メカニズムはわかっていません。

このほか、たばこやガソリンといった有害物質によるもの、薬物によるものがあります。

けれど、どれも0.1%~1%ほどの確率だとわかっており、可能性としては低いでしょう。

嗅覚過敏だと、どのようなことが起きる?

偏食になる

料理を食べるとき、ニオイで食べられるかどうかを判断しますよね。

くさいと感じるものは食べられないし、おいしそうだと感じるニオイがあると食べられます。

このように、食事と嗅覚の関係は強いもの。

自閉症特性をもったお子さんが偏食になる原因は、嗅覚過敏が大きいとされています。

調理された料理は、たくさんのニオイが1皿に凝縮されていますよね。

私たちは1品のニオイとして感じることができますが、過敏になっていると、食材ひとつひとつのニオイ、調味料のニオイを感じ、混ざりあって悪臭となり、食欲をなくしてしまいます。

人と会うことができない

口臭や体臭、くさくないと思われている人にも、ニオイがないわけではありません。

嗅覚過敏が重い人は、微量なニオイを感じとり、息や体臭などが気になって人と会うことがむずかしくなります。

化粧品や香料がつけられない

嗅覚過敏の人の多くは、化粧品や香水の匂いを悪臭だと感じます。

ほとんどの人にとって香水や化粧品はとてもよい匂いですが、そのなかには、神経を刺激し、異常な脳発達をうながすという報告もあります。

そのため、発達障害のお子さんにとっては最も苦手なニオイとなるでしょう。

ひとつのニオイに執着する

好きなニオイ・嫌いなニオイがはっきり分かれるので、嫌いなニオイをかがないように、好きなニオイに執着する傾向が。

また、発達障害をもつ子にとって、「嫌いなニオイ=不安をあおるもの」という認識があるため、落ち着くために好きなニオイを嗅ぎつづけることがあります。

嗅覚過敏の治療法は?

薬物治療

慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、顔面・頭部外傷によるものは薬物療法ができます。

副腎皮質ホルモンの点鼻薬をつかう方法や、アレルギーを抑える薬、ビタミンなどを投与します。

手術治療

「内視鏡下鼻副鼻腔手術」といい、慢性副鼻腔炎には有効です。

手術によって、鼻腔内の形態異常を矯正したり、副鼻腔炎や嗅裂の原因を取り除いて治療します。

心因性によるものに効く薬はない

精神薬を投与した結果、嗅覚過敏が軽くなったという報告はあります。

けれど、それは嗅覚過敏を治すためにつかわれたわけではなく、精神疾患を抑えるために投与した結果、副産物のように嗅覚過敏の症状が緩和しました。

薬として「効果がある」とは証明できないものです。

今のところ、精神疾患や発達障害などの嗅覚過敏を治す薬はありません。

そのため、ストレスをへらし、リラックスできる時間をつくったり、苦手なニオイを避けるという対応が必要になるでしょう。

まとめ

臭覚過敏があると、食事ができなくなり、人とも会えず、外にも出られません。

生活とニオイには密接なかかわりがあり、とても重大な疾患です。

発達障害や精神疾患などには有効な治療が見つかっていないので、本人の努力やまわりの理解が大切となります。

嫌がっているニオイを嗅がせたり、ムリに苦手なニオイのあるところに連れて行かず、配慮を心がけましょう。