発達障害で非常に困ることのひとつ、自傷や他害。
お子さんにケガをしてほしくないですし、ほかの誰かに迷惑をかけることは避けたいですよね。
自傷・他害を止めるにはどうしたらいいか。
適切な対応、環境、長い期間をかけて、へらしていくことが肝心です。
この記事で自傷・他害の原因や、自傷、他害が見られたときの対応、予防策などを確認していきましょう。
自傷・他害の原因
自傷・他害をへらしていくためには、自傷・他害の原因を特定することが大切です。
いつ、どんなとき、何があったときに起こったのか記録しましょう。
自傷・他害が起こる原因は人それぞれですが、考えられる原因は以下にあります。
自傷の場合
・わからないことの積み重ねによる不安
・急な予定変更による混乱
・上手く意見を伝えられないことへの不満
・余暇時間に何をすればいいのかわからない
・遊びが楽しすぎることによる興奮
他害の場合
・わからないことの積み重ねによる不安
・急な予定変更による混乱
・上手く意見を伝えられないことへの不満
・自分に攻撃的な人がいた
・怒りなど強い感情をおさえられない
・要望が叶わないことへの不満
・叩かれた人の反応がおもしろいと感じている
・叩くことが悪いとわかっていない
私たちから見ると、「そのぐらいわかるだろう」と当然だと感じることが、発達障害をもつ方にはハードルが高いことがあります。
出来事や環境をよく思い出してみましょう。
自傷・他害が見られたときの対応策
自傷・他害が見られたときの対応を間違えると、行動が悪化することがあります。
自傷・他傷への適切な対応をご紹介します。
自傷の場合
危険な自傷もあり、力づくでも止めたくなりますね。
しかし、自傷は反射のように体が動く状態です。
反射のような状態を止めようとすると、全力で抵抗するものです。
そのため、力づくで止めることはしてはいけません。
自傷があらわれたときの適切な対応は、発達障害の子への被害を最小限に抑えることです。
壁に何度も頭を打ち付ける場合は、壁と子どもとのあいだに、クッションをサッと挟んで、クッションに頭を打ち付けるようなかたちにします。
または頭を防備するアイテムも活用するとよいでしょう。
他害の場合
他害が出そうな兆候があらわれたら、叩かれそうな子や人を避けさせたり、なにかで気をそらせたりします。
そして叩かなかったことをほめたり、要求を叶えたりします。
「叩くのを我慢したら、いいことがあった!」という成功体験を積ませることが理想です。
もし支援者に他害が出てしまった場合は、過度な反応をしないように気をつけましょう。
むずかしいことですが、叩かれたときの反応がおもしろくて叩く場合があるからです。
また叩かれたあとに、子どもの要求に応えてはいけません。「叩いたら要求が通った」と覚えてしまうと悪化する可能性が非常に高くなります。
同じように叩き返すのもやめましょう。
やり返したくなる気持ちもありますし、教育として叩いてしまいそうにもなります。
けれど、同じようにやり返して痛みを教える方法や、怒りにまかせて悪意ある言葉をかけるのは、発達障害の子には合っていない教育です。
落ち着いて言葉を選んで、「叩くのは悪いこと」「人を叩いてはいけない」と教えましょう。
自傷・他害をへらす方法
自傷・他害をへらすためには、生活や環境のなかで、自傷・他害が出るようなものをなくすことも重要です。
見てわかる環境にする
発達障害の子はまわりの雰囲気から情報を読み取るのが苦手です。ここで何をしたらいいのか?
○○したいとき、どこでできるのか?など不安が積もってしまいます。
環境を整えたり、絵カードなどをつかったりして、ここは何をする場所なのかをわかりやすくしましょう。
刺激物をへらす
自傷・他害が出る原因が感覚過敏であったときは、その子が受け入れられないものをへらす工夫をしましょう。
音にたいして過敏な子なら、イヤーマフを購入したり、静かな環境を用意したりします。
コミュニケーションツールを使う
とくにコミュニケーションがむずかしい子には、自分の気持ちを顔マークなどで描かれた絵カードを使用したり、トイレやテレビ、要求としてありうるものを描いたものを用意して、コミュニケーションを助けましょう。
スケジュールを徹底する
先の見通しがもてなかったり、急な予定変更があったりすると大きな不安・ストレスを抱えてしまいます。
学校だけでなく、家でもスケジュール表を用意して、確認することを教えましょう。
薬の使用
あまりにひどい場合は医療との連携も必要になるでしょう。
自傷・他害に処方される薬としては次のようなものがあります。(必ず以下のものが処方されるわけではありません。 小児科、精神科などの医師との相談のもと、薬が処方されます。)
・非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール)
・抗てんかん薬(カルバマゼピン、バルプロ酸、クロナゼパム)
・循環器用薬(クロニジン、プロプラノロール、グアンファシン)
・リチウム
薬を使う場合、気になるのは副作用ですね。
副作用は、日中の眠気、体重増加、高血糖などのほか、不整脈になるものもあります。
どの薬でも、肝機能障害、腎臓機能障害や、血小板や白血球の低下などが起こる可能性があります。
継続して薬を服用するときは、定期的に、血液チェックや、心電図チェック(不整脈が起きる可能性がある薬の場合)を受けなければいけません。
ただ、薬ごとに詳細や副作用はちがうので、病院にかかったとき、医師への確認をしっかりおこなってくださいね。
まとめ
自傷・他害を長い期間を経て止めていくには、
①原因を特定すること
②自傷・他害が起こるときの対応に気をつけること
③生活、環境などを整えること
以上3つがカギとなります。
自傷・他害があまりにもひどい場合、改善が見られなかったときは、医療との連携も必要になるでしょう。
薬の詳細や副作用・リスクなどをしっかり確認して、処方してもらいましょう。