この記事では、お子さんの強いこだわりに悩んでいる保護者や支援者の方に向けて、お子さんのこだわりが改善された4つの事例をご紹介します。
お子さんの強いこだわりに悩んでいませんか?
こだわりにしたがうと、生活や経済面の負担が重くなりますし、こだわりを止めさせてしまうとパニックを起こして泣きわめいたり、自分や人を叩いたり。
どうにもならず、困っている方も多いでしょう。
発達障害の強いこだわりや、こだわりが改善された事例は多くあります。
そのうちの4つをご紹介します。
感覚にこだわりのあるAくん
特別支援学級に在籍する小学三年生のAくん。
唾吐きなどに強いこだわりがあります。
唾をめいいっぱいに口の中にためます。
「口の中にためないように」と注意しても直りません。
【改善】
口の中に唾をためる行動は、お子さんが「唾を飲み込まない」という強いこだわりがあるから。
就寝中は唾を飲み込めているので、飲み込めないわけではありません。
唾吐きには物理的な対策をしました。
マスクを着用させる方法です。
「マスクを外したら風邪をもらう(または花粉症になる)からトイレに行って唾吐きはできない」「だから唾をためこまないようにしよう」と説明しました。
また水分補給だといって、水分や糖分を適度に補給させると、自然と唾が飲み込まれて、唾吐きがなくなります。
【支援のポイント】
・「唾をためないように」と注意しない
・唾をためこむことができない状況にする
・水分や糖分を適度にとらせる
「字は書かない!」とこだわるBくん
通常学級に在籍する小学1年生のBくん。
小学校に上がってから、まったく文字を書こうとしません。
文字を教えようとすると「いやだ!やめて!書きたくない!」と強く反発します。
字を書きたくないと思う原因は2つ考えられます。
道具へのこだわり(クレヨン→鉛筆に変わったこと)と、書き順にしたがうことへの抵抗です。
Bくんは道具へのこだわりが強いことがわかりました。
鉛筆のほかに、新品のノートに書くこともむずかしい様子です。
【改善】
道具にこだわっている場合は、文字や筆などをつかってみたい!と思わせることが重要です。
たとえばネットショップなどで売られているジャンボ鉛筆。
初めて見た子どもは「すごい!つかってみたい!」と思うでしょう。
Bくんはアニメが好きだったので、そのアニメがプリントされている鉛筆にしたところ、興味がわき、少しずつお気にいりの鉛筆をつかって文字を書くようになりました。
また新しいノートは、失敗したらどうしよう、汚したらどうしよう、と不安をあたえるようでした。
そこで段ボールや適当な紙にすると楽しく書いていました。
少しずつ警戒心がへっていき、書くことにも慣れて、ノートにも書けるようになりました。
【支援のポイント】
・イヤがる原因を見つける
・道具を好きなもの、興味あるものに変える
・何も気にせず、自由に書くことができるものから始める
食べもののかたちにこだわるCくん
特別支援学校に通う、小学4年生のCくん。
偏食がひどく、好きなお菓子はそのまま食べるけれど、食事はきざまないと食べられません。
少し大きめにきざんだものだと吐いてしまいます。
【改善】
幼児期は魚やカレーが食べることができていたので、きざみ食を止めて、そのままでも食べられる食材を調べました。
①おかずを食材ごとに分けたり、好きなものを半分に切るなどして、小さく食べさせるようにします。慣れてきたら、食材を少しだけ大きくきざみました。
②食材ごとに分けず、そのままの状態のおかずを差し出します。子どもに好きなおかずを選ばせて、1品だけ子どもの前に置きました。
③3品のおかずを小鉢に少量ずつとって、食べるように促しました。さらに座席配置を工夫して、食事に集中できるようにします。
①~③まで少しずつおこなうと、通常のかたちでほとんど食べられるようになりました。
【支援のポイント】
・無理強いはしない
・食べられる食材をチェックする
・量を毎日少しずつ増やす
・どれだけ食べれば終わるのかをわかりやすくする(おかずをたくさん並べず、1品ずつ出す)
未経験のことに強い抵抗があるDさん
特別支援学校に通う、小学1年生のDさん。
入学直後は保育園との生活のちがいにパニックを起こすことがよくありました。
そのほか「学校には先生。家には父、母、兄」という強い思い込みがあり、保護者参観、運動会などで母親が学校に来ていると泣いて、母親が帰るまで大声で泣き続けます。
また家庭訪問で教師が家に来るとパニックになりました。
【改善】
授業参観の前日に母親の写真カードをカレンダーに貼り、「明日はお母さんたちが見に来ます」と伝えます。
学校だけでなく、家のカレンダーにもお母さんが来ることをメモしてもらって、当日の朝にも写真カードとカレンダーで確認するようにしました。
学校にお母さんが来たら「お母さんが来ても、いつもと一緒。」と安心できる声がけをします。
何度も予告することで、学校で母親を見ても落ち着くことができるようになりました。
運動会の場合は、事前の練習時に、何度も母親に参観してもらいました。
母親を拒んだときはイラストを描いて説明しました。
母親の参観する回数が増えるごとに少しずつ意識しなくなり、本番でも何事もなく過ごせました。
【支援のポイント】
・手順カードや絵カードを使用する
・安心できる言葉がけをする
・カレンダーやスケジュールを家と学校で用意して、先の見通しをもてるようにする
まとめ
本人の感覚や決まり事に強いこだわりが出ます。
どれも大切なことは無理に変えさせないことです。
感覚のこだわりには原因を調べて、別の方法を試します。
本人の決まり事には妥協案を出したり、その気にさせる方法などを。
このほかにも強いこだわりが改善した例があります。
お子さんは何にどのようなこだわりをもっているかをよく調べて、最適な改善案を見つけましょう。
書籍
●発達障害の子育て相談④こだわり行動
理解と対処と生かし方 白石雅一・著 本の種出版
サイト
●静岡県特別教育体制推進事業
「自閉症の指導」研究実践事例集
(静岡県教育委員会・発行)