子育てにおいて怒ったり泣いたりして言うことを聞かなかったりなどのお子さんの癇癪や問題行動でお困りの方はたくさんいらっしゃるかと思います。
そのような中で、「お子さんの行動を分析する」ということをするとお子さんの日ごろの行動から保護者の負担までかなり変わるかもしれません。
今回の記事は問題行動からお子さんの行動を分析する応用行動分析学、「ABA」の基礎から実践方法まで分かりやすく説明しますので、
お子さんの行動にお困りの方、子育ての方法にお悩みの方はぜひ実践してみてください。
発達障害の療育におけるABAとは
ABAとは、応用行動分析学といわれる心理学の学問分野で、
「人の心は行動と環境の相互作用によって動く」という行動分析学をもとに人の行動を分析した上で問題行動に対応するというものです。
このABAは教育、スポーツ、企業コンサルティング、リハビリなど様々な現場に取り入れられており自閉症児や発達障害児の問題行動を改善するために療育現場でも用いられます。
療育現場においては子どもの問題行動の前後の原因と結果を洗い出したうえで周囲の環境を調節することによって問題行動を減らしたり、
代わりになる良い行動を増やしたりする療育方法のベースとして取り入れられている理論で、親子でおこなうペアレントトレーニングもこの手法を取り入れています。
実際アメリカの研究結果では、ABAを用いた療育を早期に受けた19人の軽度または中度の知的に遅れのある自閉症の子どものうち、9人が知的に正常域になり、付き添いなして小学校の普通学級へ入学できたという事例があります。
そのため、このABAが発達障害の療育で大きな効果があることが証明されました。
ABAの実践方法
基本的に「ABC分析」と呼ばれるフレームワークを基に問題行動の原因、結果を整理していきます。
A(Antecedent) =先行事象・・・行動前の状況
B(Behavior) =行動・・・ ・・問題行動そのもの
C (Consequence) =後続事象・・・・問題行動によって得られた結果
以下の例の行動から、お子さんの行動の前後に起こったことをこの3つに当てはめていきます。
おもちゃ売り場の前でおもちゃを買ってもらえずに泣いて言うことを聞かない子ども
A・・・先行事象はおもちゃ売り場の前にいる時
B・・・問題行動は泣いて言うことを聞かない
C・・・後続事象ははおもちゃを買ってもらえる
というような形になります。
この場合、「泣いて言うことを聞かない」という行動は、
親にとっては問題行動でも、子どもにとっては「おもちゃが手に入る」という機能をもった行動と認識されます。
それが結果としておもちゃ売り場の前を通ると毎回泣いて言うことを聞かないという行動をする形に繋がり、この行動が常にされることを「強化」といいます。
そして、この行動を強化する原因となる「おもちゃを買ってもらえること」を「強化子(きょうかし)」といいます。
ここでの対応は大まかに分けて2つあり、「問題行動を減らす」か「代わりになる良い行動を増やす」の2つで、行動機能を分析して、以下のように対応をします。
Aの先行事象(環境・要因)を変えるBと同じ機能が得られる、別の望ましい行動を教える(代替行動)
Cの後続事象(結果・反応)を変える
Aを変える場合はおもちゃ売り場の前を通らないという対応になり、
Bであればお手伝いなどの何かいいことをした時におもちゃを買い与える、
Cであれば泣いても反応せずおもちゃを買わない、
など行動の原因と結果を明確にすることで効果的な対応ができ、
結果「泣いて言うことを聞かない」という事がおもちゃを買ってもらうことにおいて効果的ではないと子どもが学習することで問題行動がなくなり、これを「消去」といいます。
また、Bの対応を続ければ「お手伝いをすることでおもちゃをかってもらえる」という代わりになる望ましい良い行動が「強化子」として行動が「強化」され、問題行動を減らして良い行動を増やすことができます。
もちろん効果に関しては個々で違うので、場合によっては「消去バースト」と言われる問題行動が一時的に強化されることもありますが、子どもが学習するまで根気よく続ける必要があります。
大切なのは問題行動の「要求に従わないこと」です。
要求に応じてしまうと誤学習してしまい、かえって逆効果になってしまいます。
このABC分析のフレームワークは家庭でも実践することができるので、お子さんの問題の行動に合わせて当てはめていきましょう。
・問題行動の要求に応じない
・良い行動を増やす強化子を見つける
まとめ
このようにABAを用いた支援は、問題行動を減らし望ましい行動を増やすことや、自己肯定感を高めながら成長を促していくことができます。
それと同時に、周りの大人や保護者、支援者も負担が減り、効果的に支援をすることができます。
もちろん問題行動への対応の仕方も子どもによって様々で、子どもによっては時間がかかるケースもありますが、
個々に合わせた対応によって「強化」と「弱化」を使い分けて子どもの問題行動の解消に繋げていけると思います。
ABAは資格やプロのセラピストでなければできないわけではありません。
しっかりとしたマニュアルとセラピストの指導があれば保護者が自宅で行うことも可能な療育方法です。