障害児への音楽療法とは、子どもが歌ったり踊ったり、楽器を用いたりなど、音楽を使って子どものあらゆる発達を伸ばす療法です。

音楽療法ひとつといっても、現在はさまざまな工夫がされており、セラピストごとに大きなちがいがあります。

音楽の質や流し方、音に合わせた動き(踊ったり歌ったり、楽器を弾いたりなど)、それぞれに個性があり、お子さんと合っているかどうかも変わります。

この記事では、音楽療法が障害のある子どもにとってどういった効果があるのかをやり方などを含めて詳しく解説していきます。

障害のある子どもにおける音楽療法の役割

たとえば音に敏感な自閉症傾向がある子は、音楽をつかって音に慣れさせることで、音という一つの脅威がへり、自己成長につながります。

また知的障害のある子の知能指数が上がったという声もありました。

たくさんある音楽療法の役割をご紹介します。

①他社の存在や社会を認識する

自閉症児や発達が遅れている子は、他者と自分との境界線があいまいになっていることが多いです。

つまり他者の刺激に鈍く、言葉がけに反応しなかったり、笑顔を向けられて笑うなど、表情を返すこともむずかしいです。

音楽療法では、そういった子たちが「好きだ」「心地よい」と感じる音楽を流すことで、音を受け止め、他の存在を意識するという感覚を育てます。

②コミュニケーション能力が上がる

音楽療法にはセラピストと1対1だけでなく、集団でおこなうものもあります。

音楽に合わせて楽しく一緒に歌ったり踊ったりするので、自然とコミュニケーション能力が育ちます。

③柔軟性・社会性を育てる

音楽のリズムには不規則なものもあり、そのリズムに体や声を合わせることで柔軟性を育てることができます。

また、集団療法で楽器を演奏し、自分のパートで弾いたり、順番まで待ったり、まわりに合わせたりします。

社会での決まりを守ることや、役割を認識するといった社会性を高めることが期待できます。

④情緒の安定

自分の感情や想いを上手く発散させられないと、自傷行為や他者を傷つける行為をしてしまいます。

そこで自傷行為が見られる子には、太鼓などを叩かせて感情を健康的に発散させます。

普段あまり活発でない子は、静かな音楽から始め、徐々に情動を高めていくようにします。

発散と安定、両方をバランスよくできるのが音楽療法です。

⑤体の感覚を統合する

発達が遅れている子には、作業をしていても視線が横を向いているなど、感覚がともなっていないことがあります。

音楽で楽器を見ながら鳴らしたり、音楽を聴きながら弾いたりすることで、身体運動と感覚を合わせていく効果があります。

⑥安心・満足・達成感を経験する

情緒に不安を抱えている子どもにとって、音楽は予測がつかない刺激になります。

自閉傾向があると、なおさら怖い刺激です。

音楽療法で、音楽が子どもにとって怖くない存在だと経験させることは、大きな安心感になります。

また音楽は曲調や楽器の使い方など、子どもの特性や発達に合わせやすいので、子どもにとって楽しく簡単に超えられる課題になります。

満足感や達成感を感じてもらえるでしょう。

障害児における音楽療法のやり方

音楽療法はまず個人と集団の方法に分かれます。

時間は約30分~60分と設定されていることが多いです。

教室や病院、療法士の自宅などで、音楽療法士や保育士などと一緒に決められたプログラムを実行します。

プログラム実施の流れは以下になります。

音楽療法の流れ

1.関係づくり

2.アセスメント

3.長期目標・短期目標・改善対象とする行動を決める

4.プログラム実施

5.結果・考察

6.(必要であればアセスメントに戻る)

アセスメント・目標設定・評価

アセスメントでは、

①障害の程度(主な障害、発作等)

②運動面や認知面の様子(歩き方がぎこちない等)

③人とのやり取りや情緒面の様子(接触に過敏に反応する等)

④行動面(多動行動、不安傾向はあるか)

⑤音楽に対する反応(音量や音質、好きな音・音楽)

などを分析・評価することが多いです。

そして子どもに合わせた音楽プログラムを決めます。

長期目標は約1年、短期目標は約3か月と考え、改善させる行動などの目標を決めます。

プログラムは療法士の考えや、子ども一人ひとりによってちがいますが、声・合唱・楽器・身体運動など広く取り入れることが多いです。

音楽療法をおこなったあとは、必ず子どもの様子を評価・考察して、音楽が合っているかどうかをチェックします。

療法が合っていないようなら、再びアセスメントに戻る、の繰り返しです。

子どもに最適な音楽や方法を見つけ出すまでおこないます。

まとめ

音楽療法にはさまざまな効果があります。

とくに自閉傾向が強い子や、不安を抱えやすい子には、音楽のような不規則性のものは強い刺激です。

イヤだった音が、実は安心させてくれるものだったと知るのは、とても貴重な経験になります。

「どうせ無理なのでは?怖がって聴かないのでは?」と思うかもしれませんが、誰でも心地よい音があります。優秀な音楽療法士がきっと見つけてくれるでしょう。

あきらめず、音楽療法をぜひ検討してみてください。

参考書籍

●声・身体・コミュニケーション 障害児の音楽療法
(土野研治・著/ 春秋社・出版)
 
●子どもの豊かな世界と音楽療法
(加藤博之・著/明治図書・出版)

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