この記事では、ご自宅でペットを飼われているご家庭やこれから検討するご家庭に動物と関わるでお子さんの成長を促すことができる方法をご紹介します。
アニマルセラピーとは、動物たちを用いて、精神の回復や生活の質の向上を目指すものです。
イルカや馬など頭が良く、人とコミュニケーションがとれる動物がおもに用いられてきました。
最近では、セラピー犬や、ペットによるセラピーも注目されています。
人にさまざまな効果をあたえる動物たち、その効果や理由、具体的な実施方法をご紹介します。
アニマルセラピーの効果
発達障害の子どもがいる家庭で、ペットがいる家といない家では違いがあるとも報告されています。
動物たちがもたらしてくれる効果を見ていきましょう。
幸せを感じる化学物質の分泌を促進
ペットと親密な関係になると、エンドルフィンやオキシトシンなど、幸せを感じる化学物質の分泌が促進されることがわかっています。
そのため不安やストレスを感じやすい発達障害児でも、リラックスできる時間をつくることができます。
ソーシャルスキルが育つ
米国のミズーリ大学、獣医学部の研究グループが、自閉症スペクトラム障害の子ども70人を対象にして、電話調査をおこないました。
するとペットを飼っていない家庭よりも、ペットを飼っている家庭で育った自閉症児のほうが、「ソーシャルスキルが高い」ことがわかりました。
さらに調査をすると、ペットを飼うことで「自分と相手を大切にしながら、自分の感情や意見を相手に伝える」といった能力が向上することも明らかになっています。
犬は明確な指示を出さないと意志が通じないので、自己主張するには良い相手です。
また犬の感情を受け入れながら、関係を親密にするという経験は、自己抑制をする体験としても役立つのでしょう。
注意欠陥症状が改善された例もある
カリフォルニア大学アーバイン校が、ADHDの子どもへのアニマルセラピーの実験結果を 英ザ・ウィーク誌にて公表しています。
ADHDであり、薬物治療を受けていない7歳~9歳の子どもたちに、犬によるアニマルセラピーを受けさせた結果です。
ドッグセラピーによって、子どもたちの注意欠陥症状だけでなく、社会性も改善されました。
なぜアニマルセラピーが効果的なのか?
なぜこのような実験結果になったのでしょうか。
アニマルセラピーに効果がある理由は、以下のように考察されています。
太古の血の説
アニマルセラピーが人を癒す根拠として、よく挙げられているのが「太古の血」の説です。
古代から、人は鳥や小動物が水場で平和に過ごしている姿を見て、肉食獣など危険がないことを確認し、安心していました。
その行動が遺伝子に組み込まれているため、現在もリラックス状態の動物を見ると心が穏やかになるという説です。
生命愛(バイオフィリア)
ADHDなどの注意力に障害のある子の多くがアニマルセラピーを受けて、意欲や注意力が上がる結果が出たことから「生命愛」が考えられました。
生まれつき、人には動物や自然に注意を向ける性質が備わっているとする説です。
動物とのコミュニケーションは複雑ではないから
動物には何を言ってもいいわけではありませんが、人から嫌われるだろう言葉を発したとしても、動物たちは好きでいてくれます。
人への不安・恐怖を感じている子にとっては、とても気軽にコミュニケーションがとれる相手です。
また自分がどんな状況でも、動物たちは「どうしたの?」と聞いてくることもなければ、無理に相手を変えようともしません。
純粋に「遊びたい」「大好き」などのプラス感情を伝えてくるだけなので、気持ちが軽くなり、心地よいコミュニケーションがとれます。
アニマルセラピーの実施方法
ペットが子どもに良い影響をあたえることがわかりましたが、ペットも命。簡単に家で飼うのはむずかしいでしょう。
また動物がもとから嫌い・犬猫アレルギーがあった場合は逆効果になってしまいます。
お子さんが動物がもとから好きなのか、性格などを見て、アニマルセラピーを受けましょう。
つぎのものは、東京コミュニケーションアート専門学校とアニマルセラピー協会が協力しておこなったドッグセラピーです。
実施方法や課題・評価を簡単にご紹介します。
1回1時間・1年の長期プログラム
自閉症、脳性麻痺、ウェスト症候群、学習障害、軽い自閉傾向と診断された子どもたちや、その兄弟がドッグセラピーを開始。
1人の子どもに1~2人の担当者がついて、犬との接し方を教えます。
1年間の長期プログラムを実施し、春と秋は屋外で、夏と冬は屋内で約1時間実施されました。
課題は非接触・接触・ブラッシング・ウォーキングの4種類
非接触は、子どもと犬たちが接触せず、犬を紹介するときに子どもが注目しているかどうかを見ます。
接触は抱く・なでる行動です。
接触・ブラッシング・ウォーキングは付き添いの担当者が実演して見せて、子どもに実行するように促します。
子どもが犬に注目したり(非接触の課題)、抱く・なでることが成功したらすぐに褒めて、子どもの良いおこないを強化するようにしました。
子どもの行動の評価
子どもの笑った回数や犬にさわった回数、変化した行動などを記録します。
さらに
①犬との全体的な関わり
②接触
③ウォーキング
④ブラッシング
⑤その他
5つの観点から、子どもと付き添っている担当者が子どもの行動を5~6段階で評価します。
②の接触の場合、犬に自らさわりにいけたかどうか、犬が喜ぶさわり方ができたかどうかを見ます。
またドッグセラピー中の子どもの様子をビデオにも記録するので、子どもに変化があったのか、セラピーの効果があったのかどうかを確認しやすくなっています。
まとめ
アニマルセラピーは幸せな気持ちを増やしたり、心地よいコミュニケーションがとれたりするので、自閉傾向のある子に癒しをあたえることができるでしょう。
またADHDの注意欠陥にも良い影響をもたらすことが、研究によって明らかになっています。
動物がもとから苦手、または動物アレルギーではないかぎり、動物たちは良い効果をあたえてくれるはずです。
ドッグセラピーを実施している団体があるので、一度参加してみてはいかがでしょうか。