子育てにおいて、自分の子どもが「言うことを聞かない」「乱暴」「落ち着かない」「ぐずぐすする」などの問題行動は多くの方が経験されるかと思います。

しかし、手探りでの解決方法は多くの時間を必要とし、時として親子の関係が悪化してしまうことがあります。

そこで、「PCIT」と言われる親子の心理療法を用いた子育ての支援方法があります。

一体どんな心理療法なのでしょうか。

この記事では、子育てに悩んでいる方に向けて、PICT療法のご紹介をします。

PCITとは

PCITとは親子相互交流療法といい、育児における幼い子どもの問題行動に対する心理や原因と育児に悩む親の相互理解のために親子の相互交流を深め、その質を高めることによって関係の回復に努める行動科学に基づいた心理療法です。

1970年代に米国のSheira Eyberg教授が考案・開発をおこない、もともとは問題行動のある子どもとその養育者である育児に悩める親のためでしたが、近年では問題行動という広い枠組みから、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)の子どもや虐待を受けた子どもとその親との関係改善においても介入があり、効果的な結果が報告されています。

そのため、PCITは米国だけでなく、オランダ、ドイツ、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、香港、シンガポールなど世界各国に広がっています。

PCITの対象となる人

PCITの対象をなる人は2歳から7歳の心理状態や行動に問題のある幼い子どもとその育児に悩む養育者です。養育者には実親だけでなく、里親や祖父母なども含まれます。

心理状態や行動に問題のある幼い子ども具体的に、

・「言うことを聞かない」「乱暴」「落ち着かない」「ぐずぐすする」などの一般的な問題行動のある子ども

・発達障害(自閉症スペクトラムやADHD)や知的障害に伴う問題行動がある子ども

・分離不安障害や不安障害に伴う問題行動がある子ども

・虐待被害やDVの目撃によるトラウマ体験に精神症状や問題行動のある子ども

育児に悩む養育者とは

・子育ての経験があまりない養育者

・自身の子どもの頃に虐待やマルトリートメントを受けた養育者

・自身に発達障害のある養育者

・虐待やマルトリートメントの恐れがある養育者

・DVの被害者

・うつ病・うつ状態にある養育者

どんなことをするの?

ユニークな心理療法

PCITの基本的な手法としては、治療室内にて養育者と子どもにプレイセラピーと言われる直接遊戯療法おこない、その時、別室にいるセラピストがマジックミラー越しに無線を使って養育者にスキルをライブコーチする心理療法です。

1回での療法の長さは60分から90分であり、通常12~20回で終了します。

2段階に分かれたプログラム

プレイセラピーの中で、親子の関係を強化することを目的とした前半部分であるCDI(子ども指向相互交流 Child-Directed Interaction)とよい指示の出し方や子どもがより親の指示に従えるようにする効果的な「しつけの仕方」を指導し、子の問題行動をターゲットにその減少をはかる後半部分であるPDI(親指向相互交流Parent-Directed Interaction)2段階に分かれていて、マステリング方式といい前半を終えると後半に進むことができるシステムです。

CDI(子ども指向相互交流Child-Directed Interaction)とは

おこなうスキル

  • Praise               具体的な参照
  • Reflect               繰り返し
  • Imitate                 まねをする
  • Description          行動の説明をする
  • Enjoy                   楽しむ

避けるスキル

  • Command            命令
  • Question              質問
  • Criticisms            批判

PDI(親指向相互交流Parent-DirectedInteraction)とは

  • 良い指示の出し方を親に教える
  • 親子にタイムアウトの手順を教える
  • まずセラピストと練習をしてから子どもと練習をする
  • 徐々に家庭内でもタイムアウトを適用して一般化していく

宿題が義務付けられる

各セッションの終わりに宿題が出され、養育者と子どもは家庭でその宿題を取り組み、それがプログラムで得たスキルの一般化に繋がります。

まとめ

PCITとは、子どもの問題行動における心理や原因を心理学的な観点から探求し、実際の親子の接し方を客観的に見たセラピストが各フェーズにおけるスキルの習得に専門的なアドバイスをしてくれ、宿題を用いた家庭でも取り組みやすいプログラムになっています。

ペアレントトレーニングやPCITなどの理論に基づいた子育ての手法は今後養育者にとって子育てに欠かせないものとなっていくかと思います。