自分が簡単に身につけてきた動作を丁寧に教えるのは、とてもむずかしいですね。

お子さんも自然とマネて覚えるのではないかと思ってしまいがちです。

発達障害の特性や遅れがあるとその通りにはいきません。

この記事では、保護者の方に向けてお子さんの正しい身辺自立の攻略法や注意点をご紹介します。

身辺自立を教える前の注意点

何度教えても間違いが直らなかったり、上手くいかなかったりするときは、なにか原因があるかもしれません。

身辺自立を教えるときに注意したいことを確認しておきましょう。

基本動作の手順を統一する

必ず家庭内や学校などで手順を統一しましょう。

みんな家族から教えられたことを当然のようにおこなっているので、たとえばお母さんとお父さんのやり方が実はちがっていたということがあります。

あるご家庭のお子さんは、いつも服を裏返しにして脱いでいました。

お母さんが何度注意しても直りません。

なぜかというと、お子さんとお父さんが一緒にお風呂に入るとき、お父さんがいつも裏返しにして服を脱いでいたからでした。

まわりに気づかず、手順の違いが起こっていることがあります。

自分にとって正しいと思うやり方をしてくれないときは、周囲の人を確認し、手順を統一しましょう。

言行一致が基本

声がけをして動作を手助けするときは、必ず「言行一致」でないといけません。

たとえば「いただきます」「ごちそうさま」。

あるお子さんはいつも学校で「いただきます」では食べず、時間が過ぎて「そろそろ終わろうか」と先生から声がけをされてから、あわてて食べていました。

家庭でも、お母さんが「いただきます」と声がけをしても食べません。

食事が終わりに近づくと、いつもお母さんは「仕方ないね」と言って、ご飯を子どもの口に運びます。

このことで、子どものなかでは「いただきます」では「食べてはいけない」、「終わろうか」が「いただきます」の意味に。

「仕方ないね」で食べさせてもらうと覚えてしまっていました。

そこで「いただきます」という言葉と同時に、教師が子どもの手をとって食べさせるようにしたら、挨拶で食べられるようになりました。

子どもに声がけで動作を教えるときは、発言と行動を一緒にするように気をつけましょう。

身辺自立の教え方のコツ

生活の基本動作だけでなく、なにか新しいことを教えるときにも役立つコツです。

コツを身につけて、お子さんが自分で生活できるように助けましょう。

スモールステップが大事

「ズボンをはく」ことは1つの動作であり、ズボンをはけたら「成功」だと思います。

けれど、子どもにとってはズボンをはくまでの動作にいくつも障害があり、乗り越えないといけません。

そんな子どもにズボンをはけることが成功だと教えると、失敗ばかりが続き、やる気や自信をなくしてしまうことに。

そのため1つに見える動作を細かく分けて、少しずつほめてあげてください。

動作のどこでつまずいているかを知る

「ズボンをはく」動作を細かく分けると、6つの動作に分けられます。

  1. 両手でズボンを持ち上げる
  2. ズボンの足をいれるところを確認する
  3. 左足をいれる
  4. 右足をいれる
  5. ズボンに足をいれたまま立ち上がる
  6. ズボンを引き上げる

ズボンを引き上げる動作をさらに細かくすると、

  1. 足首から膝まで引き上げる
  2. 膝からお尻まで引き上げる
  3. おしりから腰まであげる

と3つの動作があります。

お子さんがどの動作につまずいているかを知り、その部分を重点的に教えましょう。

子どもの年齢や状況で手助けの方法や順番を変える

大人が子どもの動作を手助けするときは、3つの観点から考えます。

①確実に動作ができること

②自分でやれた!という感覚をもたせること

③手助けに頼らないようにすること

①の確実に動作ができることは、子どもに成功体験をつくり、やる気や自信を出させるために必要です。

大人が手を添えて手助けすれば、確実にできますよね。

けれど、「ズボンをあげて」と声だけで指示すると、失敗する確率が高くなります。

ただ②の自分でやれた!感覚をもたせるには、声がけが有効です。

子どもが自分で最初から最後まで動作をおこなって、成功すると「自分でやれた」と思ってもらえますね。

そして③は「手助けに頼る」のをへらすことです。

大人が手を添えて手助けするときは、力具合を弱くしたり、手助けする時間をへらしたりして、徐々に手助けに頼らないようにできます。

声がけの場合は、言葉をへらしたり、調整したりすることができません。

そのため子どもは毎回、声がけの指示に頼らないとできなくなる可能性があります。

3つの要素を考えると、幼稚園や小学校に上がる前までは「成功体験をつくること」を重視して、声がけではなく、大人が手を添えて教えたり、見本を見せたりして教えます。

動作を覚えたり、高学年になったりして、今するべきことや、やり方がわかっているのに行動にうつせない子には、

②の自分でやれたという感覚や、

③の手助けに頼らないようにすることを育てます。

そのため声がけからスタートします。

このように、子どもの年齢・性格・状況に合わせて、手助けの方法や順番を変えていくことが大切です。

アイテムを使いやすいものにする

子どもにとって使いづらいアイテムがあるときは、アイテムを工夫するのも良いでしょう。

固形せっけんが泡立てにくければ、泡立てネットやポンプ式のせっけんに変えます。

靴ひもを結ぶのがむずかしそうだったら、マジックテープの靴に。

何度も失敗して失敗経験をつくるより、身近なアイテムを変えて成功体験をつくるほうが重要です。

必ずそのアイテムを使わなくてはいけないという決まりはないので、お子さん生活しやすくなるために、工夫できるアイテムを見つけましょう。

まとめ

お子さんに身辺自立を教えるときは、

①スモールステップでほめる

②動作を細かく分けて、どこでつまずいているかを知る

③子どもの年齢・性格・状況に合わせて手助けの方法や順番を変える

④アイテムを工夫する

以上のことが大切です。

「できて当たり前」といった通常の感覚でなく、1つ1つの動作が子どもにとって大きな成長。

スモールステップで成功したら、たくさんほめましょう。

参考書籍・サイト

書籍
■遅れのある子どもの身辺処理支援ブック
 (坂本裕・著 / 明治図書・出版)

サイト
■身辺自立の指導法  月刊 発達教育より 武藤 英夫(発達協会)臨床心理士
 
■子どもに身辺自立の教えるときのコツ 堺市

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