障害をもつお子さんの将来のためにお金を貯めていますか?

「お金があれば安心」ですが、お子さんが多額のお金をもらったあと適切にお金を使っていけるかどうか、不安になることはないでしょうか。

またはお子さんが詐欺にだまされて、遺産をまるまる取られてしまうこともあるかもしれません。

「信託」はそのようなトラブルから、お子さんや資産を守る制度です。

この記事では、お子さんの資産を守るための「信託」とは何か、信託の種類などを解説します。

信託とは?

信託とは、親が亡くなったあとの資産や保険金などの遺産を兄弟や親せき、または信託会社、信託銀行などに託すというもの。
託された人や企業が、毎月決まった金額をお子さんに振り込みます。

通常の委任契約とちがうのは、財産の所有権が託された人に移転することです。しかし、託された人の固有財産になるわけではないので、託された人が自己破産することがあったとしても、財産には影響がありません。

信託銀行や信託会社にお願いする場合

信託銀行や信託会社などなら会社の信用があるため、お子さんが亡くなるまで、しっかり毎月必要な金額を振り込むようにしてくれるでしょう。
ただ制度がしっかりしているぶん、管理費が高いところが多いです。

兄弟や親せきに託す場合

兄弟や親せき、第三者と契約書を書き、信託契約を結ぶことになります。
管理費用を抑えることができますが、あくまで私的な契約です。保証や監督をしてくれる機関はありません。

子どもに訴える能力がなければ、お金が給付されず、生活が困窮するという危険も考えられますね。
兄弟や親せきなど第三者にお願いするときは、慎重に相手を選びましょう。

信託監督人という制度がある

第三者に遺産を信託するときに不安が残る場合、「信託監督人」という制度を利用できます。

託された人が資産を適切に管理しているかどうか、第三者に監督してもらうものです。
ただ信託監督人には税理士など専門家が就くことが多いため、監督費用がそれなりにかかってきます。

また、遺産を信じて託したのに信託監督人を設定するのは、「信用していない」ともとれることなので、託された人の気を悪くさせてしまうかもしれません。
託された人が責務を真剣におこなわなくなるおそれもあります。
信託監督人を置くかどうかはよく考える必要があります。

生命保険信託という新しいサービス

「信用できるところにお願いして子どもにお金を給付したい」「けど管理費用は抑えたい」という方におすすめなのが、「生命保険信託」というサービスです。生命保険信託は名前の通り、生命保険金のみを扱います。

生命保険の受取先を信託会社や信託銀行に変えて、定期給付など生命保険金の管理を適切におこなってもらうというものです。

管理費用を抑えられる

2015年から始めたプルデンジャル生命保険の生命保険信託は、保険金の最低金額の設定がなく、財産管理の手数料は年2万円とかなりお手頃になっています。

信用会社によって管理費用・サービスは異なります。なかには管理費用が高いぶん、資産運用をしてくれたり、契約内容の個別設定ができたりとサービスが充実しているところもあります。
いろいろな会社を調べてみて、条件に合うところを選びましょう。

生命保険信託を取り扱っている会社・銀行

・みずほ信託銀行 想いの定期便

・プルデンジャル生命保険株式会社

・ソニー生命保険 とどける想い

・第一生命 想いの定期便

特定贈与信託

信託に関して重要な制度「特定贈与信託」をご紹介します。
信託を信託銀行などにお願いするとき、「節税効果」と「定期給付」の両方ができる制度です。

一定の条件で贈与税が非課税に

信託銀行などで特定贈与信託を利用すると、以下の金額を限度額として、贈与税が非課税となります。

・特別障害者(重度心身障害者)
 ~6000万円まで

・特定障害者(中程度の知的障害者や、障害等級2級・3級の精神障害者など)
 ~3000万円まで

特定贈与信託を利用するときの注意点

・特定贈与信託の制度は「障害をもつ子どもが将来にわたって安定した生活を送る」目的としてあります。
そのため特定贈与信託を利用すると、給付するお金で生活に必要のないものの購入や、株式を購入することはできません。銀行預金のように、まとまった金額を引き出すこともできません。
生活費と薬の購入など療養費に限られます。

・信託銀行や会社を利用することになるので、管理費用が高くなります。

・給付を受けるお子さんが亡くなった後、財産が残っていた場合、お子さんの相続人などに残りの財産がわたります。
残った財産を社会福祉団体に寄付することも選べるので、もし財産が残った場合の受取先を事前に決めておきましょう。

・信託契約をする条件や注意事項を多く定めている銀行や会社もあります。
特定贈与信託を結ぶときは、必ず各ホームページに記載された条件や注意事項をしっかり確認してください。

まとめ

信託には第三者の個人にお願いする方法と、会社や銀行にお願いする方法があります。

個人にお願いするときは「信用」が問題になり、会社や銀行にお願いするときは「管理費用の高さ」が大変なところですね。

しかし、生命保険信託や特定贈与信託といった制度があるので、「管理費用の高さ」は少なからず負担がへっています。

個人にお任せするのに不安が残る場合は、このような有効なサービス・制度をつかって、信用を買うほうをおすすめします。

いろいろな生命保険信託会社や信託銀行のホームページをチェックしてみましょう。

信託契約を結ぶ条件や注意事項の確認は忘れずに。

参考・書籍サイト

【書籍】
●障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」
(渡部 伸・著/ 主婦の友社・出版)

【サイト】
●一般社団法人 信託協会 生命保険信託

●富永正見税理士事務所 特定贈与信託のデメリット