ADHD(注意欠如・多動性障害あるいは
注意欠陥・多動性障害)のお子さんが将来的に社会に
出て適応できるようになるためには、問題行動への関わり方が
とても重要になります。
ADHDのお子さんに適切な支援をすることで将来のすごく活躍ができるかも知れません。
あの誰もが知っている有名な会社の社長をしているかたも自分がADHDだと公表しています。
実際に成功者にはADHDの方が多いらしいです。
この記事では、ADHDと診断された子の育て方、問題行動への対処法を説明します。
ADHDとは
ADHDとはAttention-Dificit/Hyperactivity Disorderの略で、注意欠陥多動性障害(注意欠如多動症)ともいわれます。
注意力の弱さや落ち着きのなさなどといった行動の特性がある障害で、一言で表すと、「自己コントロールが利きにくい障害」と表現できます。
自分の注意力や集中力、抑止力(制止する力)を適切にコントロールすることが難しく、生活のさまざまな場面で不適応を起こしてしまいます。
生まれつきの脳機能のかたよりが原因となって起こる障害であり、育て方やしつけ方が原因で起こるものではありません。
ADHDの発症の原因
前頭前野と尾状核の異常
ADHDのある子どもは、脳の前頭前野の血液量が少ないというデータがあります。
(※前頭前野…情報を的確に認識し、状況や場面に応じて適切な行動をとったり、自分の注意や感情をコントロールしたりする働きをつかさどっている部位)
前頭前野がうまく機能していないことにより、集中力の維持、感情の抑制、行動の計画、思慮深さ、ワーキングメモリー(学習や認知などの情報を処理する為に、一時的に処理される記憶のこと)などに弱さがみられます。
また、脳画像のデータから、脳の尾状核が小さい傾向があることも分かっています。
(※尾状核…運動や行動をスムーズに行う為の調整機能をつかさどっている部位)
ドーパミンの働きが弱い
神経伝達物質の一つであるドーパミンやノルアドレナリンの働きが不十分であることがADHDの行動特性を引き起こす一因と考えられています。
これらの物質が有効に作用しないと、注意力を低下させたり、作業の遂行の妨げたり、記憶力を低下させたりする恐れがあります。
ADHDの特性
ADHDには、不注意、多動性、衝動性の3つの特性があり、人によってどの特性が目立つかはまったく異なります。
不注意
- 注意散漫で物事に集中しにくく、忘れやすい状態
- まだよく聞かないうちにもう分かったつもりになり、ミスが多い
- 自分から周りに注意を向けることができない為に事故や怪我に繋がるといった状況が起こりやすい
- 集中力の維持が難しく、単調な作業や根気のいる課題などに、長時間取り組み続けることが苦手
- 部屋を片付けたり、整理整頓をしたりすることが困難なケースもある
多動性
じっとしていられず、無意識に体を動かしたり、静かにしていなければならない場面でしゃべってしまったりして、集団行動や公共の場で問題が生じてしまいます。
衝動性
思いついたことをすぐ行動に移してしまい、それがやってはいけないことだと分かっていても判断する前に即座に行動に出てしまい、行動にブレーキをかけることができない状態のことです。
気にさわることを言われたり、やられたりすると、瞬間的に暴言や乱暴な行動で反応してしまうことや、勝ちたい思いに突き動かされルール違反してしまうことがあります。
本人もルール違反と分かっていても、ブレーキをかけることができません。
特性別のタイプ
ADHDは、不注意、多動性、衝動性のうちのどの特性が強く現れるかによって、3つのタイプに分かれます。
タイプ1:「多動性・衝動性優勢型」
多動性・衝動性の特性が目立つタイプ
- おしゃべりがやめられない
- 落ち着きがなく、じっとしていられない
- カッとなりやすい
- 順番を待てない
※男の子に多い傾向があります。
タイプ2:不注意優勢型
不注意の特性が目立つタイプ
- 集中できない
- 話を聞いていないようにみえる
- 物忘れが多い
- 周囲の刺激に気をとられやすい
- 物をなくしやすい
※女の子に多い傾向があります。
タイプ3:混合発現型
不注意と多動性・衝動性の両方の特性がみられるタイプのことで、ADHDの8割がこのタイプです。
問題行動への関わり方
ADHDの特性は忘れっぽい・落ち着きがない方が多いように感じます。
それにより、よく注意をされても忘れてしまったり聞かなかったりして、「どうしてできないの!」と怒りたくなることもあるでしょう。
しかし、こんなときに伝え方を間違えると、子どもの人生に大きく影響します。
ここで重要なことは問題行動への関わりかたは、一緒に困っていることを解決することを大切にしてください。
注意すること、見逃してもいいことを分ける
困っていことを一緒に解決することは、問題行動のすべてを正そうとするわけではありません。
それをするとお子さんもあなたも疲れてしまいます。
そして、一番困っているのは、お子さんであることをわかって欲しいです。
すべてのことを一気に解決したいとたくさんのことをお子さんに注意しても、内容が頭にはいらず、そのうちにわかったふりや注意を聞き流すことを覚えるようになります。
そうならないようなるべく注意する回数をへらして、必ずやめさせなければいけないこと、そうでないことを分けるのが大切です。
問題行動をつぎの3つに分けてみましょう。
①絶対にやめさせること
②できればやめさせること
③なるべく守ってほしいこと
最もやめさせるべきことを選びだして、対策をとります。
一度にすべて直すのではなく、優先順位が低いものはあと回しと割り切ることが大切です。
このやり方は「ペアレントトレーニング」でも取り入れられています。
困った行動を具体的に書き出して対処を
その時の関わり方で紙とペンが必需品になります。
お子さんの困った行動を、ひとつひとつ紙に書き出してみてください。
食事中、夜寝る前、勉強などシーン別に書き出すと、なにが不得意なのかを分析しやすくなります。
悪いところを見つけてやる!っという気持ちではNGです。
つぎに、困った行動にはどのように対策するかを書きます。
たとえば、「忘れ物が多い」なら「忘れ物をしない」という目標ではなく、「連絡帳に持っていくものを書く」という感じです。
このことをお子さんにわかりやすく伝えます。
初めのうちは連絡帳に持っていくものを書いても、忘れ物をすることがあります。
その時は、持ち物をバッグにいれるのを一緒に手伝ってください。
一気に解決するのではなく、ゆっくり、少しずつこなしていくことが大事です。
そして、絶対に守ってほしいことは、その具体的な対策とともに紙に書き、目立つところに張り出しましょう。
お子さんと一緒になって理解し合うことが大切です。
そして、ADHDの子は聴覚よりも視覚にうったえると伝わりやすいです。
スケジュールや約束事などを見える化をすることで見通しなどもつきやすくなります。
子どもを注意するときは落ち着いて
「ちゃんとして!だめ!何をしてるの!」と怒鳴るのは、まったく伝わりません。
頭ごなしに叱ったり、たたいたりすると、なにがどうして悪いのか、どうしたらよいのかわからず、不信感や自己肯定感の低下につながります。
叱るときは、静かに穏やかに伝えましょう。
そして、いつするかも大事です。
テレビを見すぎてはいけないと叱るなら、テレビを見終わったあとにします。
夢中になっているのを遮ると、話に集中できません。
お子さんが話を聞ける様子のときに、目を見て冷静に、何がよくなかったのか、どうしたらよいのかを伝えてください。
子どもの社会性を育む関わり方
冒頭でも述べたようにADHDの特性は悪いことばかりではありません。
集中力が高いこと、目標に向かってのエネルギーがすごいことなど、良い面もあります。
この良い面や得意なことを伸ばし、自信をもたせることができると、社会で活躍する可能性が十分にあります。つぎのことを実践しましょう。
予定を把握させる
ADHDの特性を活かして視覚にうったえるように1日のスケジュール表をつくって下さい。子どもに朝、確認させることで、今日一日にすべきことを教えられます。
カレンダーにも予定を記入しておき、翌日に何をするのかを把握させます。
そのほかに、ホワイトボードでも「今日の予定」を書きます。優先順位が高いものを上に書くようにして、優先順位のつけ方を教えましょう。
やる気を引き出す
ADHDの子は、やる気を出すまで時間がかかることが多いです。楽なゲームやテレビに集中しがちになるので、勉強や習い事にもやる気を引き出させることが肝心となります。
まずは、ポイントカード制。
約束ごとを守った、勉強をした、新しいことができたときにポイントをあたえます。
ポイントがたまったら、ごほうびを。
このように、結果が目に見えるかたちにすると、やる気をグッと上げられます。
ほめて伸ばす
ADHDの子はまわりに注意されることが多く、理解もなかなか得られないので、「自分はだめなやつだ」と落ちこみやすいです。うつ病や不安障害、引きこもりなどの二次障害に繋がることも。
自分にしっかり自信があれば、前向きに落ち着いて過ごすことができ、生きやすくなります。
また本来あるエネルギーの強さで、どんどん挑戦することができるようになります。
自己肯定感を高めるために、とくに親は褒めてください。
「連絡帳に書いておく」ことができたら、ほめる。
勉強をはじめたら、ほめる。勉強を続けていたら、「続いてるね、えらいね」とほめる。
ゴールにいったことをほめるのではなく、ひとつひとつのステップを乗り越えるごとにほめましょう。
子どもの特性と合う仕事をみつける
成人になるときには、お子さん自身が自分の特性を理解して、苦手なことへの対策を自分でおこなえるようになっていると理想的です。
このようになっていれば、自身の特性に合った仕事を見つけられるでしょう。
ADHDだから、この仕事!といった決まりはありませんが、傾向としては仕事の場面や対処法に変化がある職業が向いているでしょう。
起業家、営業職、研究職などが挙げられます。
事務職や経理職、運転手など正確な作業や対応を求められる仕事やマニュアル仕事は向かないかもしれません。
しかし、好きなものにたいする集中力と行動力が高いので、一番は何が好きかを見て、能力を伸ばしすことが大切です。
まとめ
ADHDのお子さんの困った行動にはつぎのことをおこなってください。
・注意すること、見逃すことを分ける
・問題と対策を具体的に書き出す
・注意するときは静かに穏やかに
そして、ADHDのお子さんを伸ばすには、予定の立て方や優先順位のつけ方を教えること、やる気を引き出すこと、ほめて自信をつけさせること。
ADHDの子にある、「すごい集中力・行動力」という能力を活かすことができるようにしましょう。