この記事では、味覚過敏で悩まれている方に向けて、原因から見た対策について紹介します。

あなたや、あなたのまわりに、1つの食べ物ばかり好んで食べていたり、吐きそうになるほど特定の食べ物が食べられないといったことはありませんか?

「好きなものばかり食べていてワガママだ」「嫌いなものでも食べれば慣れるだろう」と感じるかもしれません。

けれど、本当に他人とちがって、味覚に異常が起きている可能性があります。

「味覚過敏」という障害です。

味覚過敏とは何か、その原因や対策などを見ていきましょう。

味覚過敏とは?

少しの香辛料を「痛い」と感じたり、肉や魚を生々しく感じたり、食材の味を強く感じ取りすぎて料理が食べられないなど、味覚が過敏になっている状態のことをいいます。

人によっては、食感にたいして過敏になっていて、とろみがついたもの、グチャグチャしたもの、パサパサした食感がダメだということも。

口の中に触れるものに過敏になっている場合もあり、金属製のスプーンやフォークがダメで、プラスチック製や木製のものにすべて変えている人もいます。

ただの「好き嫌い」とは線引きがむずかしいので、理解されず、無理に食べさせられたり、ワガママだと怒られた経験のある人が多いです。

「食事=苦痛」となり、食事自体を受け付けられなくなった人も少なくありません。

味覚過敏があるとどうなるのか

どうしても偏食がちになります。

また新しい、自分が知らない食べ物を食べるとき、「不快かもしれない」という不安が強く、受け入れにくいことがあります。

味覚過敏があると具体的にどのようなことがあるか、以下にまとめました。

・同じものばかり食べる

・新しい食べ物をなかなか受け付けられない

・特定の食べ物を食べると吐いてしまう

・食器にこだわる

・調理方法にこだわる

・食感にこだわる


・金属が歯に当たると吐き気がする

味覚過敏の原因は?

発達障害…とくに自閉特性がある方に多く見られる症状ですね。

けれど、「味覚過敏=発達障害」とは限りません。

考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。

①外的障害によるもの

舌や軟口蓋の炎症、外傷、やけどが原因で起こることがあります。

そのほか耳鼻科での喉の手術や歯科での麻酔などで、神経が損傷した場合に起こります。

②舌の表面に異常がある

舌の表面に褐色、白や黒色のコケ(舌苔)が多くなっているなど、舌表面に異常があると味覚がおかしくなることがあります。

口の中が乾燥しているときに起こりやすいです。

③内的障害によるもの

肝機能や腎機能の障害が影響することがあります。

薬の副作用によって一時的に起こっていることも。

そのほか、味覚障害の原因に最も多いものが「亜鉛不足」。

味覚障害の70%は亜鉛の投与で治る、緩和されるといわれています。

④風味障害

味覚は正常でも、嗅覚過敏があると味覚にも影響します。

⑤心因性によるもの・発達障害など

うつ病の兆候や、不安神経症など強いストレスが原因であることも。

味覚過敏の治療・対策は?

味覚障害の診断は、まず症状の長さや病気の有無、服薬歴などを問診してから、口の中や舌を診ます。

肝機能や腎機能、亜鉛不足などは血液検査・尿検査でわかります。

神経に異常があるかどうかを診るのは、電気味覚検査やろ紙ディスク法など味覚検査。

嗅覚障害があるときは、強い香りなどを嗅がせて反応を見ます。

心因性のものは心療内科での治療に。

発達障害などメカニズムがわかっていないものは、確かな治療法がないので、日々の対策が重要になります。

無理に食べさせない

健康面を心配して、食べさせようとする方もいるでしょう。

けれど、当事者にとっては「食事=苦痛」となりかねません。

ますます偏食がひどくなる、または食べるのを拒否するようになるおそれがあります。

「食事=苦痛」と思わせないことが大切です。

年を重ねるごとに、食べられるものが増えていく人もいます。

「誰かからではなく、自分の意思で食べること」を強く意識しましょう。

調理方法や食器類などを変えてみる

食感や、使われている調味料の味が受け付けられない場合もあります。

どうしても栄養面で食べてほしいときは、調理方法を変えたり、食材を見えないように細かく刻んでまぜたりなど工夫してみましょう。

または金属製のスプーンに過敏に反応していることもあるので、本人の要望を聞いて食器類を変えてあげましょう。

新しいものを食べさせるときは説明を

味覚過敏がある方は、新しい刺激にたいして不安になりがちです。

不快感を避けようとして、食わず嫌いも起こることがあります。

始めて食べさせるものは、材料、作り方、風味などを説明し、本人にイメージさせると食べやすくなることがあります。

スモール・スモールステップで

自閉症のお子さんには、皿に乗っているだけで食欲をなくしてしまう子もいます。

そのため、「一口食べさせる」という目標は高すぎます。

まずは「皿に乗っているのを見る」ことから始める。

食べなくても大丈夫ですので、本当に小さなステップを踏んでいきましょう。

まとめ

味覚過敏の症状は好き嫌いと大きくちがいます。

線引きがむずかしいので、多くはワガママだと思ったり、無理に食べさせようとするかもしれません。

けれど、食事が苦痛になると偏食がひどくなったりして、ますます不健康に。

無理に食べさせようとせず、調理を工夫したり、料理のし方を教えたり、「本人が自分の意思で食べること」を大事にしましょう。