黒板をキーッとひっかく音に不快感がある、多くの人が経験しているでろうこれも「聴覚過敏」です。

そのほか、赤ちゃんの泣き声やサイレンの音に不安や恐怖を感じてしまう。

話し声にノイズがまじる。そして、頭痛やめまいをともなったり、耳をふさがないと生活できない場合、聴覚過敏症となります。

今回は、聴覚過敏とはなにか、その原因や、普段の生活での対策を見ていきましょう。

聴覚過敏とは?

特定の音に強い苦痛、不快感を感じたり、さまざまな音がすべて同じぐらいの音量で聞こえてしまうのが「聴覚過敏」とされています。

疲れ、頭痛やめまい、体調が悪くなるほか、症状が重い人は特定の音を聞いただけで、その場から動けなくなったり、パニックを起こすことがあります。

耳鼻科での扱いは少なく、精神的なものや、脳の機能障害としてとらえられることが多いです。

聴覚過敏があるとどのようなことが起こるのか

聴覚過敏があると、 仕事や会話、睡眠など 日常生活の様々なことに支障をきたすことがあります。

ひとつのことに集中できない

健常者は必要な音、必要でない音を聞き分けることができます。

そのため、ひとつのことに集中するとき、自然とまわりの声や音が小さく聞こえたり、まったく気にせずいられたりします。

聴覚過敏のかたは、人の咳払い、話し声、風の音、掃除機やパソコンなど機械音、さまざまな音で頭の中が埋めつくされてしまうので、勉強や仕事に集中できなくなります。

2人以上の会話ができない

会話をするときも、話し相手の声以外に、ほかの人の話し声や足音、あらゆる音であふれている状況です。

まわりの音と、相手の声が同じぐらいの音量で聞こえたり、まわりの音のほうに過敏に反応してしまい、会話ができなくなることがあります。

さらに、2人以上になると、生活音がますます大きくなるうえ、どの声に集中すればよいのかがわからず、話についていけなくなることも。

睡眠障害をともなう

音に過敏なために、睡眠がうまくできないかたが多くいます。

よく眠ることができないため、体の健康だけではなく、精神的にも影響があります。

パニックを起こすことがある

発達障害の方に多いです。

さまざまな音でいつも頭の中がいっぱいになるので、普段の生活からずっと不安や緊張を感じています。

つもりにつもった不満が爆発した結果、泣いたり叫んだり、不快な音に対して攻撃的になることがあります。

聴覚過敏の原因は?

では、どのようにして起こるのか、どの病気に起こるのか。

完全なメカニズムはわかっていません。

事例報告としては、つぎのようなことがあります。

騒音性難聴やメニエール病など耳の障害

「聴覚補充現象」といって、ある特定の音が通常の人よりも響いて聞こえ、苦痛をともないます。

とくに、子どもの声、テレビの音、高音の機械音、車の走行音に強く反応してしまうとされています。

顔面神経麻痺やあぶみ骨切除など外的要因

耳の奥にある、あぶみ骨は必要以上の音が聞こえないように、動いて調整する機能があります。

このあぶみ骨を切除した人であったり、顔面神経麻痺があると、あぶみ骨が動かなくなり、音を拾いやすくなってしまいます。

うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など心的要因

過度なストレスが、聴覚過敏を引き起こすことがあります。

特定の音、ストレスを感じた出来事とかかわる音が気になり、苦痛を感じます。

発達障害

発達障害のかたには生まれつき、特定の音に反応したり、すべての音が等しく頭にはいってくる特性があります。

ある音が鳴って、ほかの赤ちゃんは反応しないなか、一人だけ泣いたりする様子が見られます。

しかし、発達障害のかた全員がそうではなく、逆に感覚がとても鈍い人も。

または、ある音には強く抵抗するけれど、多くの人が嫌がるような黒板のキー音には反応しないケースもあります。

聴覚過敏症の治療・対策は?

耳の障害、外的要因があるかたは耳鼻科に相談しましょう。

脳の機能や精神的な要因だと感じるなら、精神科、心療内科、神経内科などを受診することをすすめます。

そして、普段の生活では、「音が聞こえるのをへらすこと」を重視しましょう。

イヤーマフ・耳栓をする

まわりの音を遮断することで、比較的おだやかに過ごすことができます。

イヤーマフや耳栓をしていると、不真面目な印象をもたれることがあるかもしれませんね。

そんなときは、聴覚過敏用マークが施されているイヤーマフもあるので、ぜひ活用してみてください。

人が集まるところに行かない

人が集まるところには、許容量を簡単に超えてしまうような音であふれています。

たくさんの人の話し声、足音、ものが擦れる音や、館内放送など。

体調が悪くなったり、パニックを起こす可能性が高くなります。

なにか別の音に集中する

ある特定の音はだめだけれど、この音なら平気、むしろ心地よいと感じることがあります。

通勤電車やお店などで、心が落ち着く音楽や音をiPodなどにいれて聴くと、ストレスがやわらぐでしょう。

リラックスする時間をつくる

ストレスは、聴覚過敏を高めることがわかっています。

音がしない場所や心地のよい音がする場所に移動し、ひとりの時間をつくって、少しでもストレスをへらすようにしましょう。

まわりの人の理解が大事

小さな声で話しかけたり、驚かすような音を出さない。

学校や仕事場なら音の少ない席に移動させる。

イヤーマフや耳栓の使用を許可する。

このように、まわりの人の理解と支援が重要となります。

しかしながら、聴覚過敏はわかりにくく、本人の感覚の問題ともあって健常者には理解しづらいところがあります。

そこで、聴覚過敏のかたや支援者が、症状について説明したりして、まわりへ呼びかけることも必要です。

まとめ

聴覚過敏は、ある音が不快に感じたり、疲れ、頭痛やめまいなど苦痛を感じることです。

聴覚過敏のかたがどれだけ苦しんでいたとしても、大丈夫な音がどのぐらいなのかを察するのも、無音にすることも、むずかしいです。

そのため、イヤーマフや耳栓をつかったり、聴覚過敏について説明したりと本人や支援者が努力も求められます。

それにこたえて、一人ひとりの理解と配慮が大切となります。

参考文献

「赤ちゃん~学童期 発達障害の子どもの心がわかる本」(主婦の友社)
「発達障害の子どもの心と行動がわかる本」(田中康雄)
jstage論文