どれだけ愛情を注いでも返してくれず、悲しくなることが多いでしょう。

同じ行動を繰りかえしたり、いうことを聞かなかったり、時にはパニックを起こしたりと困ってしまうこともありますね。

自閉症の子育てには、なにより「理解」が大切です。

お子さんの特性を理解し、適切なサポートをすれば生活しやすい環境を作り出すことができます。

ここで、自閉症の子どもとの関わり方、自閉症の子どもを伸ばす育み方を解説します。

自閉症の子どもとの関わり方

自閉症のお子さんの健やかな成長のために、次のことをご参照ください。

自閉症の特性を理解する

ほほえみかけても話しかけても反応がなかったり、抱っこを嫌がられたり、愛情が返ってこないのはとてもつらいこと。

「まったく、この子には何も伝わらないのではないだろうか」

そう不安になりますが、共感力が弱いことや、喜びの言葉や感情を出すのが難しいのです。

そういった特性なのだと理解しましょう。

それに、これからもずっと、まったく反応がないわけではありません。

10回20回、同じやりとりをしても反応がなかったお子さんが21回目にはなにかを返すことがあります。

その小さな反応を見逃さず、声をかけるなどして、共感力を高めることが大事です。

否定して怒らない

カッとなると、「ダメ!」だとか、「~してはいけない」といったように否定して叱ってしまいがちです。

自閉症のお子さんは強い否定をされると、その行動どころか、自分までも全否定された気持ちになってしまいます。

否定だけでなく、「~しなさい!」といった命令形も、過敏な自閉症のお子さんはずっと気にしてしまうでしょう。

注意するときは、「~しなさい」や「~してはいけない」ではなく、「~しましょう」。

たとえば、おもちゃを出しっぱなしにして片づけないときは、「散らかしちゃだめ!」「片づけなさい!」ではなく、「おもちゃは棚にしまおうね」と優しく。

カッとなりそうになったときほど慎重に。

いったん落ち着いてから注意をしましょう。

指示はシンプルに、わかりやすく

指示するときは、「1つの文章で1つの指示」を意識してください。

「手を洗ってからご飯を食べましょう」だと、手を洗わずにご飯を食べてしまいます。

いうことを聞かなかったわけではなく、反抗する気持ちもありません。特性のために、長い文章や突然の指示が理解できないのです。

こういったときは、まず「手を洗いましょう」つぎに、「ご飯を食べましょう」と指示します。

指示はひとつにして、短くすると伝わりやすいです。

常同行動はムリに直さない

手を叩いたり、ぶらぶらさせたり、同じどころをグルグルとまわったり。

人がいるところだと、あまりしてほしくないと感じますね。

常同行動をする理由は、不安や緊張をやわらげようとしていると考えられています。

または、興味や活動の範囲がせまいので、次になにをしてよいかわからなかったり、好きな行動だからしていることも。

不安や緊張を感じているなら、「不安だね」「緊張するね」と、状況を言葉で説明すると、常同行動がおさまっていく傾向があります。

ただ、ムリに止めようとすると、余計に不安や緊張を感じやすくなってしまいます。

特性のひとつなのだと理解しましょう。

パニックを起こしたときは

予想外のことが起こったり、不快なことがあったり、そうした不安や不満が爆発した結果、パニックを起こすことがあります。

パニックを起こしたときは、落ち着くまで待ちましょう。

声をかけたり、止めようとすると、もっとひどくなります。

学校など家の外で起こった場合は、「安心できる場所をつくる」ことが大切です。

別室に移動したり、しきりをつかって自分からも相手からも見えないように工夫しましょう。

自閉症の子を伸ばすには適切な療育をすることが大切

自閉症やその他の発達障害のお子さんが自立や社会に適応していくことをサポートする「療育」というものがあります。

子どもの特性にあわせた教育やコミュニケーションスキルを上げる練習、親やまわりの正しい接し方などを学ぶことができます。

早いうちから療育をはじめると効果があらわれやすいとされています。

長い療育を経て、言葉や知能の遅れをとりもどしたり、コミュニケーションをある程度とれるようになることもあります。

将来的な就職への選択の幅も広がります。

現在では、療育はさまざまな方法があります。

場所もたくさんあり、家庭教師のような個人指導、病院や医療施設、民間・公的な療育期間など。

学校が終わった後の放課後や休日に療育を受けることができる「放課後等デイサービス」や保育所に通いながら療育を受ける「児童発達支援」もあります。

お子さんの特性にあった療育を選んでください。

まとめ

自閉症のお子さんの困った行動には大きな理由があります。

対応を間違えないことが重要となります。

・「~しましょう」と落ち着いて注意する

・ひとつの文章にひとつの指示

・常同行動は特性として理解する

・パニックは静かに見守る、または安心できる場所に移動する

自閉症は早いうちに療育をはじめて、適切な教育をすることが大事。

生きやすさ、もといお子さんの人生が大きく変わるでしょう。

お子さんの特性と向き合い、お子さんと相性のよい療育を模索してみてください。

参考文献

宮本 信也 (監修) 「 自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の本 」 2015/7/11